イギリスで見出した高齢化社会が持つ可能性とは?--トビタテ!留学経験者インタビュー Vol.11後編
6611
View
スポンサーリンク
氏家好野さんは、シニア向けビジネスについて学ぶためイギリスのウォーリック大学ビジネススクールにトビタちました。大学の授業やボランティア活動を通して気付いた、日本の高齢化社会・シニア雇用における問題点が数多くあったようです。後編のこの記事では、氏家さんの考えるシニア向けのビジネスモデルと授業で学んだことをご紹介します。留学生活の概要やイギリスを選んだ経緯などは前編の記事をご覧ください。
スポンサーリンク
前編はこちら
世界トップレベルのビジネスを学びにイギリスへ!--トビタテ!留学経験者インタビュー 前編
今回インタビューしたトビタテ生
氏家好野さん
写真左側が氏家さん
氏家さんは早稲田大学国際教養学部4年生です。大学の交換留学プログラムとトビタテ!留学JAPAN(※)のプログラムを併用し、イギリスにあるウォーリック大学のビジネススクールに1年間留学されました。
※トビタテ=トビタテ!留学JAPAN 日本代表プログラム。官民協働の留学支援制度で、返済不要の奨学金が給付される。
父の影響でシニア雇用に関心を持つ
ーー 氏家さんはシニア向けのビジネスに取り組まれていますが、そもそもなぜシニアに関心を持つようになったのですか?
きっかけは私の父親です。私が大学1年生の時に父が就職活動をすることになって、私も一緒になって仕事を探したのですが、どこにも受かることができませんでした。最初父は新聞で情報収集していたので、私はもっとインターネットを活用するよう勧めました。ネットで探せば、シニアでもできる仕事がたくさん見つかると、軽く考えていたのです。
しかし、誰でもできるようなバイトでも全部落ちてしまって。人手が足りないと言われている世の中で、健康寿命が伸びて元気に働けるシニアの数も増えてきているのに、このままではダメだと思いました。
こういう私の考えをもっと多くの人に知ってほしい、もっと大きな影響力を持ちたいと考えたときに、この課題をビジネスで解決してみたいと考えました。保険制度など、シニアの人でもちゃんと働く能力を持っていることを証明できる何かを提供できたらいいなって思って。
しかし私にはビジネスの知識がないため、もっと勉強したい思いが芽生えて、ビジネススクールに行くことに決めました。ただ、今はシニア雇用より、シニアとITの壁をなくすなど、シニアと若者を近くするサービスをやってみたいので、興味は少し変わって来ているのですが。
イギリスで気付いたのは高齢化に対する姿勢の違い
ーー そうだったんですね。実際にイギリスでビジネスを学んで、何か気付いたことはありましたか?
日本では高齢化問題はネガティブなトピックですが、それを逆手にとるというか、それを武器に日本が世界のモデルになれる可能性があるなと思いました。過去に日本の企業が打ち出した方針やビジネスモデルが今でも海外のビジネススクールで教えられていて、かつての日本のすごさを感じました。ですが今の日本には、そんな元気はないですよね。
今の日本は、高齢者の人数が増えるペースが世界でトップです。そういう状況下で良い事例を出して、モデルやフレームワークを日本から発信すれば、他の国も参考にするようになります。今後シニア社会としてあるべき日本の姿は、そういうことなんじゃないかなと思います。課題は山積みですが、逆に今後の日本の可能性を留学中に見出すことができました。
ーー おっしゃる通りですね。現地でボランティアもされていたようですが、これもシニア関連ですか?
そうですね。AgeUKというイギリス最大級のボランティア団体で、2か月ほど活動しました。イギリスではもともとボランティアに対する関心が高くて、このAgeUKは国民誰もが知っているような大きな団体なんです。規模が大きい団体なので、そのシステムはどうなっているのか気になって参加し始めました。
活動内容としては、色んなポジションがオープンされてました。私はPR兼シニアの方とお話ししたり、チャリティショップにも関わっていました。
特に感銘を受けたのは、AgeUKのキャンペーンで「クリスマスにお年寄りを一人にするのはやめよう」という取り組みです。もっとこういう活動を日本でもできたら、と思いました。イギリスでは、こういった活動が若い人も積極的に関わるモダンなものとして普及しています。
対して日本では独居老人が多いにも関わらず、全くそういった問題に関心がない。例えば「お正月に一人で過ごすのやめよう」など、日本でもできると思います。
ーー それは学校生活と並行して行っていたんですか?
はい。春休み中や、授業のない3学期目にやったので全然重くなかったですね(笑)。また、こういった団体に入ったからこそ、もっとこういう団体を日本でも作りたいと思うようになりました。
日本で同じように社会問題を解決できるのは、今のところ行政しかありません。AgeUKのような団体を日本に作れたらいいなと思います。
帰国してからも日本の介護施設を訪問したり、施設を運営する人と話をしたりしていますが、そもそもシニアに関するビジネスそのものが難しすぎると思います。実現できればいいなと思うのですが。もう数十年すればITのリテラシーがあるシニアの世代が増えるので、何か変化が起こる気もします。でも今はまだ難しいですね。
スポンサーリンク
留学生活を振り返って
ーー トビタテで最初に立てた留学計画と実際の留学を振り返って、達成度はどのくらいだと思われますか?
まずインターンやボランティアも最初の予定とは変わりましたね。勉強を頑張ろうと思って留学をしましたが、もっと頑張れたのではと今は思いますね。アウトプットを重視して、シニア雇用のビジネスモデルなどを形に残して帰ってこようと思っていたのですが、その点では達成度は0%になりますね…。
でも逆に、帰ってきて「日本で何か成し遂げてやろう」って思えるようになったので、その点では良かったのかもしれないですね。全体的に言うと、甘くつけて60%でしょうか。
ーー もし留学前の自分に何かアドバイスできるとしたら、何を伝えたいですか?
やっぱりスペインに行っても良かったかなと思います(笑)。ただ他は、学校やトビタテのおかげでしっかり計画を練ることができたので、それで十分でした。
ーー トビタテだったからこその経験は何かありましたか?
まずは計画をきちんと立てさせてくれたことです。誰でも「これしようあれしよう」ってぼんやりと考えることはあると思うのですが、それを実際にやってみようっていう原動力をくれたのはトビタテでした。
また、トビタテにはメンター制度があって、企業の方が渡航前後でメンターとしてついてくれます。そういうところで色んな企業の方とお話しできるので、就活にも活きると思います。
さらに、周りのトビタテ生がみんな優秀で、「自分も何か成し遂げたい」という気持ちになれたので、それも原動力になりました。本当に良いコミュニティに入れたなと思いますね。他のメンバーに会ったり研修に参加するたびに「頑張らなきゃ!」と思えました。起業経験のある人もいたので経験者からのアドバイスももらえました。
将来はシニア✕ITのプラットフォームを自分の手で
ーー 改めて、氏家さんの今後の目標を教えてください。
卒業までにシニア関連のITプラットフォームを作りたいと思います。シニアと会社をつなげるプラットフォームを作って、シニアがSNSを使って自分をアピールできるようになればいいなと思ってます。
ただ、自己満足のために作って中途半端なまま就職してしまうのも良くないし、今そのあたりを考えているところです。30歳くらいまでには仲間を見つけて事業を立ち上げるのが夢です。
ーー では最後に、これからトビタテに申し込む人や、留学を考えている人たちへのメッセージをお願いします。
留学に行ったからと言って必ず人生が変わるわけでもないし、意外と日本にいても英語を使う環境に身を置くこともできるわけです。特に「留学行ったから学歴に箔がつく」と考えてる人がたまにいますが、そういう人は留学そのものを考え直した方がいいのかな、という気はします。
トビタテの研修で船橋ディレクターが言っていましたが、留学はただ行くだけだから、帰ってきた時点ではまだ何もしてないのと同じです。せっかくトビタテで留学に行けたとしてもそれで満足してしまったらもったいなくて、その後にどうつなげていくのかが一番大事です。なので留学での経験をどう有意義に使って将来につなげていくかをしっかり考えてほしいと思います。…と言っても、将来のことは誰も分からないから、一番良いのは目の前のことに精一杯取り組むこと、だと思います!
ーー ありがとうございました!
編集後記
氏家さんとのお話を通じて、私自身も日本の高齢化社会に対する認識が高まりました。今後も日本の高齢者の割合は増えていく一方ですが、根本的な解決になるような施策がないのが現状です。
氏家さんがおっしゃっていたように、高齢化社会をネガティブに捉え、問題だと分かっていながら実際に問題解決に取り組んでいる人は少ないのも日本社会の事実です。これからの世の中を担っていく若い世代がどう高齢化問題に取り組んでいくかで、世の中は大きく変わると思います。氏家さんのように、この問題に真剣に向き合い行動を起こしていく人が増えることを願っています。
留学で海外に行き、いつもと違う視点から日本を見たからこそ気付く日本の側面があります。留学には、外国だけではなく日本について学ぶ機会もたくさんあります。これから留学に行かれる方は、現地で何を学び達成するのか、目的意識をしっかり持ち、様々なことを吸収して帰って来られるよう頑張ってください。
インタビュアー
山本和香奈(やまもとわかな)/ 早稲田大学4年 / アブログインターン生
スポンサーリンク