本当にイギリスの料理はまずいのか?<不味いと言われる理由の検証編>
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イギリスの食事はまずい!と、各国の人々から笑いのネタにされる話ですが、イギリスの友人と「これはいけない!」と相談し、どうしてまずいと言われるのか検証しました。
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本当に美味しいイギリス料理を食べる機会がなかっただけ?
観光や短期の留学などで世界の方がイギリス来た場合、よほど現地に詳しかったり、友人がいるなどでなければ、食事を摂る場所は以下のような場所に行くことが多いのではないでしょうか。
ツアーに含まれる観光地のパブやレストラン
ツアー内容には「伝統的なパブ」など紹介されていることが多いです。
怪しいガイドブックのグルメ情報に載っている場所
「あれ?ここはとっくにシェフ変わったし、こっちは閉店、うわ、なんでこんなチェーン店載せてるの?情報古い!」とびっくりな内容だったりします。
入りやすそうだったので何となく飛び込んだ店
英語に不自由はなくても本当に美味しい店は隠れ家的、割りと入りづらい場合が多いです。
「Traditional fish & chips」と大きく看板を出している観光地のパブ、レストラン
残念ながら、これらの場所では美味しい料理に出会える可能性は極めて低いです。
ツアーに含まれてるような観光地のパブやレストランに地元民は行かない
もちろん、ロンドンには多くの観光地があり、そのエリアに住む人や、働く人がそういったパブに立ち寄る光景は多く見られます。しかし彼らは、パイント(ビールジョッキ)を手に話をしているだけで、食事は家で摂るか、帰りに違う場所で食べるか、持ち帰りなどをします。
万が一、お腹が空いてそのようなパブで食べたとしても「まあ食べれたらいい、期待はしない。」と割り切っています。そういうパブだと使い分けているからです。
ですが、ツアーに参加された人々に話を聞くと、ツアーに含まれていた「伝統的な(?)」パブを楽しみにしていたのに「ビールの銘柄も説明なく、ただ、皆で何だか分からないパイを食べた。パイも湿気った感じで、あれが伝統的なら他はもっと酷いのですか?」と言われ、残念に思ったのです。
伝統的な店であることに間違いはないかもしれません。しかし、前述の通りイギリスではパブに求めるものを、行く店により分けている人も多いのです。ですから、ドリンクや雰囲気を楽しむパブでは、料理には力を入れなくても、その伝統や雰囲気が好きで人気を集めるお店もたくさんあるのです。
イギリスに住む人々は、そのようなパブでは冷凍のパイや、バンガー&マッシュにゴムのようなローストが出てくることを知っています。そして食事を目的としてパブに行く場合は、お気に入りのガストロパブや料理が美味しいと知っているパブを選ぶのです。
また、イギリスでも郊外や田舎に行くと普通のパブでもびっくりするくらい美味しくて温かなお店がたくさんあります。
ガイドブックの評価はあてにしない
たまに、これは誰が書いたのだろうかと思う内容であったり、明らかに古い情報を使い回ししているグルメ情報を見かけます。
現実はイギリスの都会では特に、数年前からグルメに対する人々の意識が上がるに連れてお店の移り変わっており、衰退も激しく、老舗と言われる店だからと期待して行くとがっかりされるかもしれません。
また、老舗は料金も高い場合がありますから「あんなに高いお金を払ったのに、なんだあれは!」と、自分の国の感覚で、物価の高いロンドンでのそういった食事を、自国の美味しく、しかしずっと良心的な値段のお店と比べ、余計に「イギリスの料理はまずい!」とインプットしてしまうこともあるのかもしれません。
安くて美味しいイギリス料理を食べさせてくれるモダン・ブリティッシュレストランや、ガストロパブ、昔ながらの食堂はなかなか数日間で探すのは難しいものなのです。
日本の平均はイギリスでは通用しない
日本では1000円以下でも美味しいランチが食べられ、平均的にムラがありません。観光地でも美味しい地のものを食べることができますが、イギリス、特にロンドンでは残念ながらそうではないのです。
安くても美味しいものもありますが、観光客が入りやすいように料理の写真や外国語メニューがあったり、入りやすいようにセットメニュー(大量の作り置きが多い)を看板に掲げ、呼び込みをしているようなお店に入ると、良い思いをすることはあまりないのでは?と残念に思います。
観光地のSOHO界隈で筆者もよく食事をしますが、「ああ。これはどうなのかしら?」というお店をたくさん見かけます。ですが、隠れ家のように点在するお値打ちで美味しいお店で、ロンドンの人たちが美味しいイギリス料理を食べていることも知っています。
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「fish & chips」はテイク・アウェイが普通
イギリスの人が大好きfish & chipsですが、観光地のパブやレストランで食べるものではありません。
皆、お気に入りのスタンドを住む町や職場の近くに持っていて、熱々を持ち帰るか、小さなお店の中でパッと食べるか、もしくはパブでも本当に美味しいレストランレベルのお店で食べるのです。
筆者は渡英したばかりの頃、今より10年近くも前なのに観光地の「自称イギリスNo.1のフィッシュ&チップスレストラン」にうっかり入ってしまい、とんでもない料理に何と20ポンド以上払った覚えがあります。
今では近所にある古くからのチップススタンドで、金曜日に熱々ほくほくを紙に包んでもらい、モルトビネガーと塩をかけて食べるのが至福の時です。そしてそれはレギュラーサイズでも、初めて入った上記のお店の2倍の量があり、お値段は10年後の今なのに5ポンドのみです。
できたら観光地で「fish & chips」ばかりを看板にうたう店は避けた方が良いです。イギリスでどうしても!というのであればSOHOなど観光地でも美味しいお店がありますから、ランチタイムにロンドンの人がオフィスから出て、手ぶらで並ぶようなお店を探してみてください。
スーパーの出来合い惣菜は物による
筆者もたまに怠けて、そのまま温めるだけのパイなどを買いますが、決して買わないだろうなと思うものもあります。出来合いでも優しい味のするパックに入ったフレッシュスープや、自分で作るのが面倒なパイ、パテなどを買うことはありますが、他の商品は中々買うことがありません。
イギリスに来たから何か変わったものを、と思い調理済みのものを選ぶと、長くシェルフに置いてあるのですから、味はボヤけてそれは美味しくないはずです。日本でも出来合いの揚げ物は衣が厚く時間が経つとべったりしていたり、茹でてある蕎麦は本当の蕎麦屋のものとは比べ物になりません。
そしてそれは日本だけではありません。でも「仕方ないよね、出来合いだし。」と、皆様が割り切っていらっしゃるのと同じ感覚でイギリス人も「レディミール」を利用しているのです(中にはキッチンを汚したくないという人もいますが)。
家庭で作ったほうが美味しいのは分かっていても、忙しく作れないときもあります。それは日本もイギリスも同じですから、イギリスの料理上手な人が家庭で手間と時間をかけて作ったイギリス料理は全く別物です。
大きなオーブンがなんとも温かい、冬場に作るパイ、大きな肉を調理するので驚くほど柔らかいロースト、根菜たっぷりのキャセロールに薫り高いラムのグリル、パウダーではない手作りのグレイビー、たっぷり一度に作るスープ、ほくほくのローストポテト、酸っぱいリンゴで作るアップルクランブルなど、挙げたらキリがないですが、どれもほっぺたが落ちるくらいおいしいです。
スーパーで買うコテージパイやゴムのようなローストとは比べ物にならない位温かく幸せな味がします。
「まずい」のではなく「違い」として捉えることが重要
確かにイギリスでは刺身にできるような新鮮な魚は限られた場所にしかなく、食材の種類も天候や土地の質により限られています。
ですが、全く臭みのないラム肉や、赤身のヘルシーな牛肉、5ポンドも出せば手に入る大きな丸鶏、脂の乗ったスコットランドのサーモンにムール貝、さっぱり味の天然牡蠣、以前【イギリスで食べたい】イギリスの美味しい食材「乳製品」5選でもご紹介した、種類も豊富で濃厚な乳製品などは逆に日本ではなかなか同じ感覚で手に入らないのではないでしょうか。そういった違いもあります。
素朴な昔ながらの味がする野菜や果物は、日本で改良された甘みの強いものに慣れていると最初はそっけなく感じられるかもしれません。また、化学調味料を使うことを苦手とする人が多いので、お菓子などフレーバーのバリエーションも少なく、ビスケットに例えると、バターやオートミール、小麦粉などの味わいがストレートなものが多いのです。
またイギリス人同士でも好みの違いが多い場合もあり、レストランではソースを別料金で選んだりすることもあります。また卓上の塩、胡椒で各自の好きな塩梅に味付けするのも特徴です。濃い味がついているお惣菜のようなものがあまりないために、焼いただけ、茹でただけの野菜や、塩気のない料理を単調に感じられる方もいるのではと思います。
ですが、一度その素朴な味に慣れてしまうと、今度は味の濃いものが段々と食べにくくなってきます。その代わり美味しいサンドイッチ(これもイギリス発祥の料理です)、シンプルに濃厚なバターやチーズ、豚肉100%に限りなく近いハムをパンに挟んだものが恋しくなります。
筆者は日本人ですから、もちろん和食が大好きです。ですが、フランスのとある大変偉い方が「(イギリスの)ハギスは人間の食べ物じゃない!」と他国の料理に言及したように、イギリス人でも「納豆はちょっと無理かも。」と思うこともあるはずです。
日本じゃなくてもヨーロッパで魚の丸焼きをしたり、たこを食べたりすることも多くありますが、イギリスでは苦手な人のほうが多いのではと思います。
しかし、それを「まずい」のではなく「違い」として捉えることで、お互いの文化を尊重しながら、良いところを見つめて楽しんだほうが、「まずい!」と決め付けてしまうより、ずっと素敵なのではないかしらと思うのです。
まとめ
最近では、個人旅行で訪れたり、旅慣れしている人たちは自分の足で探し「逆に期待外れなくらい美味しかったよ?」という声もよく聞き、大変嬉しく思う筆者ですが、皆が同じような体験をしているかといえば、まだまだそうでもないと思います。次回の記事、本当にイギリスの料理はまずいのか?<実際に美味しいものを食べるコツ編>では、どうしたらイギリスで美味しいお店にめぐり合えるかのコツを続けてお届けします!
皆様の留学生活を心より応援しています!
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この記事を書いた人
イギリスのロンドンはウィンブルドンに住んで9年目です。元ハリーポッターに出演していた夫(南アとオランダのダブル国籍です)と二人暮らしです。私がいっぱい涙が出るくらい恥ずかしい思いをしつつ経験してきた生活の知恵、英語の言い回し、イギリスの穴場やこぼれ話をお届けできたら嬉しいです。またBAFTAの試写会でのセレブリティーの写真もご紹介できたらと思います。