アメリカからイギリスへ移住した経験から<アメリカ英語とイギリス英語7つの違い>
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筆者は5年住んだアメリカ・ニューヨークを離れてロンドンに移住し、国民性もさることながら、同じ英語といえども表現の違う「カルチャーショック」を受けました。イギリスに住んで約半年の間、自分なりに研究したイギリス英語の特徴をまとめてみました。
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近くて遠い、アメリカとイギリス。アメリカ英語に慣れた人にとって、イギリスに来ると同じ英語なのに別の言語のように感じることがあるでしょう。
日本で教わる英語もアメリカ英語が主流なので、聞き取りもしづらいし、話すのも、例えて言うなら関東出身の私が関西に行って「マクド」「〜してはる」というような、エセ関西弁をしゃべるような気恥ずかしさがあります(笑)。
アクセントなんて気にせずに自分の言いたいことを話すのが一番!とはいうものの、現地の人に溶け込んで生活の中でスムーズにコミュニケーションを取るには、やはり現地の人のように話せるようになりたいということで、私なりに発見した・学んだポイントを紹介します。
イギリス英語の特徴1:あいさつ
人と会ったとき、よく「Hi(Hello)」の後に「You('re) all right?」と言われます(カッコ内は口語でよく省略されます)。まだ引っ越してきたばかりで日常にもドギマギしていた頃は「私のどこかおかしいの?」と、思わずいぶかってしまいましたが、大丈夫かどうか心配しているわけではなく「How are you?」とほぼ同様の意味で使われているようです。
「どうも」と言う感じで気軽に「Hi」の代わりに「Hiya」といういい方もよくします。こちらの表現は、幾分柔らかい印象を受けます。
アメリカ英語でくだけた関係の間でよく使われる「What's up?(最近どう?)」はあまり聞かず、同じ意味で「(Have you been) Up to much?」というフレーズがあります。返答はどちらも「Not much」、続けて実際に最近何があったかなどを話してもOKです。
イギリス英語の特徴2:語尾に「Yeah?」
もうひとつ、相手に親しみを与える柔らかいいい方として、文末に確認・念押しの意味で「〜しますね?」「ですよね?」という感じで「yeah?」と軽くつけることも多いです。
Yeah?を使った例文
- I’ll also give you a receipt, yeah?(レシートもおつけしますね。)
- It’s due today, yeah?(締め切り今日までですよね?)
- That be fine, yeah?(それで大丈夫なんですよね?/ですからね。)
イギリス英語の特徴3:疑問系の文末の音を上げない
個人的に、一番イギリス英語らしい特徴のイントネーションが出るなと感じるのが「Do you know〜?」という文です。
アメリカ英語のように「do YOU know?」と「You」が上がらずに、冒頭が全体的にフラット、のち下降して、どちらかというと「do you KNOW?」と「Know」、あるいは文節の最後にアクセントが来る感じです。
これと連動して、イギリス英語は疑問文が5W1Hから始まらない場合、つまりBe動詞やDo・Have・Can(Could)・Will(Would)から始まる文でも、文末の語尾を上げないでたずねる人が多いです。
イギリス英語のイントネーション例文
- Are you a student here?⤵︎
- Would you like a cup of tea?⤵︎
- May I take a seat?⤵︎
このイントネーションがよく「イギリス英語は気取っているように聞こえる」と言われる一因でもあるようです。
逆に、アメリカ英語のように語尾を上げてしまうと、イギリスでは直接的すぎてちょっと突っかかったような、あるいは子供っぽい感じを与えてしまうかもしれません。
イギリス英語の特徴4:現在完了形の多用
英語学習者にとってもはや基本中の基本文である「I have a pen.」ですが、実は、イギリス英語ではあまり使いません。ピコ太郎もびっくりです。
「〜を持っている」「(所有物として)ある・いる」は「I have〜」の代わりに「I have got / I've got〜」というのが一般的です。なので、上記の文はイギリス英語だと「I've got a pen.」になります。疑問形は「Have you got a pen?」です。
これはもう日常表現なので丸ごと覚えてしまうのが一番ですが、文法的に説明すると、既に手に入れて持っているという「状態」を表すので、getの現在完了形ということになっています。よく考えると日本語でも動態の「持つ」ではなく、完了・状態をさす「持っている」という形になっていますよね?
この他にも、現在完了形の時制は普段から多用される傾向にあリます。例えばアメリカ英語だと「I already sent an email.(すでにメールを送りました)」でも自然ですが、イギリス英語ではきちんと「I've already sent an email.」といいます。
イギリス人にメールを送るときは、何となく文法により気を遣ってしまいます。
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イギリス英語の特徴5:婉曲表現の多用
「英語はストレートに物を言う」とは、アメリカ英語の影響でしょうか。イギリス英語では、ものを訊ねたり依頼するときに直接言うのははばかられるので、ややフォーマルな場面では日本語のような回りくどい婉曲表現もよく使われます。以下、少し文法的な説明になります。
仮定法「If」
例文1:道を聞かれたとき
米:Go straight and you'll find it on your left.
まっすぐ行くと左手に見えるよ。
英:If you go straight, the post office will be on your left.
まっすぐ行けば郵便局は左手にあります。
皆がそれぞれこういう言い方をするとは限りませんが、あくまで傾向として、アメリカではダイレクトに命令形や「You」を主語にするのに対して、イギリス英語では直接的な言い方なるべく避けて、上記のように「〜すれば」というふうに、仮定法を用いてやわらかく教えてくれることが多い印象です。
主語を「あなた」ではなくて「郵便局」がそこにあると、相手を直接的な主語にするのを避ける言い方にも注目です。
例文2:お店のレジでクレジットカード払いの場合、店員がサインを求めるとき
米:Could you please sign here? / Please sign here.
ここにサインしてくれますか。/ここにサインしてください。
英:If you could (just) sign here, please.
ここにサイン(だけ)していただけましたら。
イギリス英語で、直接「〜してください」と言わずに、よく「If you could〜, that would be great.」や「Appreciate if you could〜」という「〜してくださったらしたらありがたいです」という仮定法を用いて、少しへりくだった依頼の仕方をすることがあります(上記の例文では「that would be great」部分が省略されています)。
場合によって、特にアメリカだとぼんやりして押しが弱いと思われる可能性がありますが、丁寧なものの頼み方として使えると好感度が上がるでしょう。
逆にイギリス人からこういう風に言われたら、自分が依頼されているのだと理解して、ちゃんと対応してあげましょう(笑)。
〜かしら「I wonder〜」
ものを尋ねたり依頼したりするとき、直接疑問文で始めるのではなく「I wonder if〜」といういい方をすると「〜かしら(でしょうか)」という物腰柔らかなニュアンスになります。「if」の後に知りたい内容や頼みたいことを肯定文で挿入します。
例文1:電話や窓口で尋ねるとき
米:Do you have availability in the class tomorrow?(明日のクラスに空きがありますか)
英:I (just) wonder if there is availability in the class tomorrow?(明日のクラスに空きがあなって知りたいのですが。)
例文2:遠慮がちに依頼するとき
米:Could you deliver the product by tomorrow, if possible?
可能でしたら明日までに商品を届けていただけませんか?
英:I wonder if you could deliver the product by tomorrow for me?
明日までに商品を届けていただけないかなと思うのですが?
遠慮のレベルや実際に頼みごとをきいてもらえそうな度合いによって色々な言い方があるので、上記はあくまでも一例です。ちなみに米でも英でも、上記のように「for me」を添えると「私のために悪いんだけど」と柔らかくなるニュアンスを与えてくれます。
ところで、アメリカでお店で注文するときによく使う「I'll have a coffee, please.」といういい方は、イギリス英語圏では偉そうでとっても失礼に聞こえるそうです。お客なので何か注文することはわかりきっているのですが、店員さんにも「Could I have a coffee, please?」と丁寧に頼むようにしましょう。
イギリス英語の特徴6:単語の違い
例を挙げればキリがないアメリカ・イギリス英語の単語の違い。昔、高1で初めてイギリス英語圏であるオーストラリアにホームステイをしたとき、事前に電話でホストファミリーのお父さんに「寒いから"ジャンパー"を持ってきた方がいいよ」と言われ、素直に薄手のジャンパーを持って行ったら全然役に立たず、イギリス英語で「jumper」とは「sweater」のことを指すのだということを身を持って知りました。
ここ5〜6年ほどイギリスで盛り上がっているチャリティデーの12/15に、オフィスでクリスマス柄の変なセーターを着るイベントがあるのですが、その名も「Christmas Jumper Day」です。このような日常用語の細かな違いがあり「ああ同じ英語でも違う国の言葉なんだ」と日々感じています。
イギリス英語はどことなく単語遣いがクラシカルな印象を受けます。例えばアメリカ英語の「check(お会計)」は「bill」で、お札は「note」といいます。
ロンドンの地下鉄で耳にするおきまりのアナウンス「Mind the gap(列車とホームの間に注意)」のような「mind」の動詞の使い方もアメリカではあまり聞かず「Watch your step」などと言っています。
余談ですが、ディズニー映画で大人気の私の大好きな「ズートピア(Zootopia)」の題名は、イギリス・アイルランド圏では「Zootolopolis」に変更されています(「〜polis」はギリシャ語由来で「都市」を意味します)。
ディズニー側は具体的に理由を明らかにしていないようですが、個人的に、ZootopiaのもじりとなったUtopia(ユートピア)が、かつてイギリスを飛び出してアメリカを建国したピューリタン思想に拠るものだからと制作側が配慮したのではないかな、と勝手に考えています。このような文化背景から来る考え方の違いも掘り下げるともっとあるかもしれません。
イギリス英語の特徴7:発音の違い
イギリス人みたいなアクセントで話せたらかっこいいですよね。イギリス英語の特徴ある発音は、巻き舌にならない(音声学の用語では「non rhotic」といいます)、「T」をはっきり発音する(あるいは発音しない「glottal stop」)など、簡単そうでクセのあるアクセントをマスターするのは、それなりに口の動かし方を変える必要があるため時間がかかるでしょう。
その中でも、特にアメリカ英語っぽいのを脱却するには「a」と「o」の音が重要だと発見しました(あくまでロンドン都市部での観察なので、地方はあてはまらないかもしれません。)。
「a」にアクセントが来るとき、アメリカ英語に特徴的な「エー」と潰れた音にならず、口の奥を縦に大きく開くイメージで、奥の方で「アー」と発音します。
「o」にアクセントが来るときは、上顎の裏のあたりで上ずったように「エゥ」のように発音する人も多いです。オフィスの隣の席で電話をかけている人が、「クール、クール」と言っているので、何のことかと思ったら「call(電話)」のことでした。
イギリス人の発音を真似る方法として、私は仕事中に近くの席で電話で話している人をこっそり真似てリピートしています。電話だとはっきり分かりやすく発話することが多く、しかも相手の声に遮られないので特徴が聞きやすいです。身近にイギリス人がいない場合は、イギリス人のでている映画やテレビ、オンライン動画を題材にしてもいいでしょう。
それから、できるだけ超・ローカルな人と話すこと。例えばタクシーの運転手さんやplumber(配管工)、エンジニア、公園に座っているおじいちゃんおばあちゃんなど、彼らは外国人の話す英語に慣れておらず、かつ我々が外国人であることを気にせずおしゃべりしてくる人も多いので、こちらも恥ずかしがらずにイギリス英語の発音を試せますし、むしろそういう話し方をしないと通じないこともあるので、自分の中でブレイクスルーのきっかけになるかもしれません(笑)。
まとめ
いかがでしたか?このほかにもまだまだ、独特の言い回しや表現の違いなどありますが、ストレートなアメリカ英語の表現と比べると、イギリス英語は文法や言い回しなどややこしい!と感じるかもしれません。人の性格やコミュニケーションも、どことなく日本人に近い感覚も持ち合わせているようにも感じます。
このような違いが生まれたのも、歴史を考えると、イギリスは島国で同じ言語/文化/習慣を共有する人たちの社会で言葉が発展してきたので、相手が同じ文化背景や価値観を共有しているという前提から、お互いを気遣うために婉曲的で最後まで言わなくても察し合うというコミュニケーションが成り立ってきたのではないかなと思います。
一方、アメリカでは移民の国として成り立った経緯から、英語を母語としない人々の入り混じった中でコミュニケーションを成り立たせる必要があったので、よりシンプルで直接的な表現が一般化したのではないでしょうか。
イギリス人やオーストラリア人は、アメリカ英語と比較して自分たちの英語をジョークで「correct English(正しい英語)」なんて言ったりしていますが、私は中国語の繁体字(英語で「Traditional Chinese」)と簡体字(「Simplified Chinese」)になぞらえて、イギリス英語を「Traditional English」、アメリカ英語をより大衆化した「Simplified English」だと考えています。
イギリスとアメリカにそれぞれ行く機会のある人は、そんな背景も考えつつ、英語の違いを感じ取ってみると面白いと思います。また、私はまだイギリスに6ヶ月住んだだけですので、イギリス在住経験者の方にフィードバックなどもいただければ幸いです。
編集部追記
本記事に関するご意見は、edit(at)ablogg.jp((at)を@に変換)までお願いします。
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この記事を書いた人
会社員生活の傍らNY留学の夢をかなえるべく2012年に渡米。ニューヨーク市立大学バルーク校MBA修了。2017年7月よりロンドンに移住。まだまだ知らないヨーロッパのダイナミクスと魅力を発見する日々です。
https://twitter.com/Sattyshamrock